研究概要 |
【目的】脊柱靭帯骨化症(OPLL)は、単純X線写真側面像を基に、形態学的に連続型・分節型・混合型・限局型に分類されている.頚椎OPLLの自然経過および頚椎椎弓形成術後において骨化巣の進展が報告され,分節型・限局型と比較して連続型・混合型の方が骨化巣進展の傾向があると報告されているが,頚椎OPLL分類の違いに着目し比較した報告は少ない.頚椎OPLL連続型・混合型と分節型・限局型を比較することによって骨化巣を進展させる因子について検討した. 【方法】OPLL患者由来の培養脊柱靭帯細胞を,頚椎X線写真および頚椎CTを用いてOPLL分節型・限局型およびOPLL連続型・混合型の2群に分類し、それに対照(コントロール)としての頚椎症性脊髄症(CSM)を加えて3群とした.それぞれの培養細胞に対して骨化誘導刺激として9時間の繰り返し進展刺激(Cyclic Stretch ; CS)を加えて遺伝子発現の変動を検討した. 【結果】CSによりOPLL連続型・混合型では骨化抑制因子TSG-6の発現が有意に増加したが、OPLL分節型・限局型およびCSMでは有意な変動がみられなかった. 【考察】TSG-6はBMPの受容体結合を抑制することによってBMPシグナルを抑制し,骨芽細胞分化を抑制すると考えられている.OPLL連続型・混合型でTSG-6の発現増加が認められ,OPLL分節型・限局型で有意な変動が認められなかった.骨化巣進展の傾向があるOPLL連続型・混合型では,TSG-6などが関与する骨芽細胞分化抑制の機構が十分に機能していない可能性があると考えられる。 【結論】メカニカルストレスとしての繰り返し進展刺激よって,TSG-6の有意な発現増加がOPLL連続型・混合型でのみ認められた.骨芽細胞分化抑制機構およびTSG-6の役割についてさらなる検討が必要であるが、薬物治療の標的の候補としてTSG-6の重要性を明らかにできた。TSG-6の役割を更に様々な角度から検討する予定である.
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