研究概要 |
8-12週齢の雄性BALB-Cマウスに盲腸結紮穿孔(cecum ligation and puncture:CLP)を行い,敗血症を生じさせた。EMSAゲルシフトアッセイにより,AP-1活性はCLP後24時間での肺組織において顕著に上昇することが認められ,AP-1デコイ核酸をCLPマウスに投与しておくと,敗血症誘発性の肺AP-1活性刺激は大きく低下した。GLP後24時間の肺組織および大動脈において,デス受容体であるTNF-R1,Fas,DR4,DR5の膜表面への発現は増加し,デス受容体経路のアダプター蛋白であるFADDの発現も増加し,caspase-8とcaspase-3が活性化していることをWestern blot解析により観察した。肺組織におけるこれらの変化は,AP-1デコイ核酸導入により著名に抑制された。TUNELおよびDNA ladderアッセイにより,CLP誘発性敗血症により肺組織のみならず大動脈,牌臓においてアポトーシスが有意に増加しており,肺でのアポトーシス増加はAP-1デコイ核酸投与により阻止された。さらに.CLPマウスにみられる肺血管透過性の亢進,低酸素血症,組織学的な肺の損傷もすべてAP-1デコイ核酸導入により抑えられた。最終的に,CLPマウスの生存率は,AP-1デコイ核酸により有意に改善した。以上の結果から,AP-1活性をブロックしてデス受容体ならびに関連蛋白の発現を抑える転写因子デコイを用いた戦略は敗血症に有用な新しい治療方法であることが示唆される。
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