NFkBとEtsは動脈瘤の発症・進展に強く関与している転写因子であり、デコイ療法はこれら転写因子の結合活性を阻害し治療効果を発揮する。前年度は2重鎖デコイの断端を環状に閉鎖したリボン型デコイの有効性をラット動脈瘤モデルで評価した。本年度は、このリボン型デコイをさらに改良・インテリジェント化し、臨床応用に向けた研究を進めた。 まず前年度に引き続きリボン型デコイの作用メカニズムの検討を培養実験で行った。マクロファージ系細胞にデコイを導入してコラーゲン、エラスチン及び細胞外器質を結合させる酵素の合成能をRCR法で評価した。これらの成果をまとめて論文を作成し、現在投稿中である。 次の実験として、これまで評価したリボン型デコイの合成方法を改良することで核酸の部分S化を行い、より効果が強く生体内で安定したデコイを作製した。この部分S化リボン型デコイの静脈投与の有効性をApoEノックアウトマウスにアンジオテンシンIIを持続皮下投与して作成するマウス腹部動脈瘤モデルで検討した。動脈瘤の形成後(アンジオテンシンII投与4週後)に1mg/Kgの部分S化リボン型デコイを1日おきに計3回静脈内投与した。投与後4週目の超音波検査では動脈瘤の縮小効果を認めたが、有意な変化ではなかった。これはデコイ治療の開始時期、投与プロトコールそして投与量が原因と考え、プロトコールを再検討中である。また動脈瘤壁での低い導入効率にも問題があると考えている。そこでデコイをインテリジェント化して構造的に安定性を高めたスペイサー型デコイや徐放性を持つナノ粒子にデコイを封入する方法を開発したので、今後これら新規デコイの有効性も検討していく予定である。
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