本研究の最終的な目的は、腎障害進行メカニズムにおけるミネラロコルチコイド受容体の役割の全容を解明し、ミネラロコルチコイド受容体拮抗薬が腎症進展に対する新たなる治療となりうるかについて明らかにすることである。実験は2型糖尿病を呈するOLETFラットを使用して、選択的ミネラロコルチコイド受容体拮抗薬であるエプレレノンの腎保護効果についての検討を初年度より開始した。20週齢からエプレレノンを経口投与し、その腎保護効果を検討している。さらに、現在糖尿病性腎症に頻用されているアンジオテンシンII受容体拮抗薬であるテルミサルタンの作用との比較、あるいは両剤使用による相乗効果についての検討を行っている。現在観察途中であるが、エプレレノンの単独、あるいはテルミサルタンの併用による強い抗蛋白尿効果が観察されている。一方、培養腎臓細胞におけるアルドステロンのミネラロコルチコイド受容体を介した酸化ストレスと細胞形態変化についても並行して検討を重ねた。その結果、アルドステロンは培養糸球体メサンギウム細胞や近位尿細管細胞などにおいてNADPHオキシダーゼの活性化を伴って活性酸素を発生させ、MAPキナーゼを活性化させて細胞障害を生じるが、このようなアルドステロンの作用はすべてエプレレノンで抑制されることを証明した。これらの結果より、アルドステロンは腎臓局所のミネラロコルチコイド受容体に結合し、酸化ストレスやMAPキナーゼの活性化を介して腎臓の障害に関与していると考えられた。現在、さらなる分子生物学的機序の解明に向けて実験を進めている。
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