細胞内で一酸化窒素(NO)産生に依存して生成されるニトロ化環状グアノシン一リン酸(8-ニトロcGMP)の心血管系における生理機能、及び病態との関連を明らかにするために、本年度は、8-ニトロcGMPによる血管収縮機能調節について、マウス大動脈を用いて検討した。 野生型(WT)、2型糖尿病モデル(db/db)およびそのコントロールマウス(db/m)から摘出した大動脈を用い、マグヌス法により、phenylephrine収縮血管標本に対する8-ニトロcGMPの効果を調べた。 10μM以上の8-ニトロcGMPでは、3群のマウス大動脈において濃度依存性に弛緩反応が観察された。一方、10μM以下では、WTおよびdb/mマウスのみで、収縮増強が示されたが、db/dbマウス大動脈では収縮は見られなかった。eNOS阻害剤であるL-NAME及びスーパーオキサイド消去剤SOD、或いはtironの前処置の影響を調べた結果、この収縮増強には、血管内皮由来のNO合成酵素(eNOS) uncouplingによって生じたスーパーオキサイドが関与することが示唆され、8-ニトロcGMPが有するレドックス活性が重要な役割を果たしていることが考えられた。また、8-ニトロcGMPによる弛緩応答に関しては、8-ブロモcGMPより強い活性が示された。その機序の一つとして、PDE(V)による分解を受けにくいことが示唆された。 今後さらにこの血管機能制御メカニズムを詳しく調べることで、様々な血管病と8-ニトロcGMPとの関連について解明を進める予定である。
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