本研究の目的は、1) メタボリックシンドロームの発症・進展における酸化ストレスの関与の証明と、2) メタボリックシンドロームに対する抗酸化薬の効果の検証することにある。具体的には、1) 培養ラット大動脈平滑筋細胞、血管内皮細胞でのインスリン抵抗性発現の細胞内分子機構における酸化ストレスの役割を解明する。 2) メタボリックシンドロームモデルラットを用いたin vivoでの酸化ストレス産生増大を証明し、抗酸化薬によるインスリン抵抗性の改善および心血管病予防効果を検討する。 3) 実際の臨床病態に近いメタボリックシンドロームモデルラットに閉塞性動脈硬化症(ASO)を合併した疾患モデル動物を作成し、抗酸化薬による病態改善効果を検討する。 本年度は上記2)に関する研究を行った。Thy-1腎炎ラットモデルにおいて、腎糸球体メサンギウム領域で、MAPキナーゼfamilyのひとつであるBMK1の活性上昇が観察され、培養ラットメサンギウム細胞においても、アンジオテンシンIIや酸化ストレスの負荷によってBMK1の活性が上昇することを見いだした。さらにBMK1のsiRNAを細胞にトランスフェクトし、BMK1の発現抑制が得られる実験系を確立し、この系でBMK1の発現を抑制すると細胞増殖が抑制された。次年度はこの知見に基づいて培養ラット大動脈平滑筋細胞でのインスリン抵抗性発現の細胞内分子機構における酸化ストレスの役割の解明と抗酸化薬の効果について実験を行う予定にしている。
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