プロスタグランジンE_2(PGE_2)は多彩な生理活性を有し、難治性炎症性疾患や発癌などに密接に関わっている。このPGE_2の産生において重要な役割を果たすPGE合成酵素が転写調節因子Egr-1により転写制御を受けていることを研究代表者らはこれまでに見いだしている。本研究課題では、この知見を実際の病態での役割に発展させる試みであり、癌の進行に伴う血管新生を中心に検討している。初年度に当たる本年度は、病態においてプロスタグランジンの供給細胞と考えられるマクロファージを用いて、PGE合成酵素の活性化を導く環境条件を検討した。具体的には、IFNγやIL-23等のサイトカインの存在下での炎症性刺激や癌病巣を想定した低酸素条件下でのプロスタグランジン合成酵素群の発現変化を検討した。また、同時に転写調節因子Egr-1の活性変動やそのコリプレッサーであるNAB2の発現も検討した。その結果、幾つかの条件の組み合わせによりNAB2による転写抑制の解除とEgr-1の活性化とそれにより誘導されるPGE合成酵素の発現上昇が認められた。しかし発現誘導を引き起こすサイトカインの濃度などの条件は不安定であり、実験例数を増やすことやより詳細な環境設定の検討が必要と考えられる。
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