プロスタグランジンE_2(PGE_2)は多彩な生理活性を有し、難治性炎症性疾患や発癌などに密接に関わっている。このPGE_2の産生において重要な役割を果たすPGE合成酵素が転写調節因子Egr-1により転写制御を受けていることを研究代表者らはこれまでに見いだしている。 本年度は、Egr-1の転写調節活性を制御する新たな因子の検索を行った。抗Egr-1抗体を用いた免疫沈降や転写活性を調べるゲルシフトアッセイでの抗体適用などから、Egr-1と特異的な親和性を有する約10種類の蛋白質が検出された。これらの蛋白質のうち、3種類がエンドトキシンなどの刺激により発現量やEgr-1との親和性の変化を引き起こすことが見いだされた。この3種類の蛋白質のうち、一つは、昨年までに関与が明らかとなったNAB2であることがサウスウエスタンブロットにより確認できたが、残りの2種に閥しては、同定にまでは至らなかった。今後、この2種類に関して、簡易的な精製や分析により同定を試みる予定である。 また、昨年までに得られた、Egr-1のコリプレッサーであるNAB2による転写抑制を培養癌細胞などに応用し、病態での関与を検討した。Egr-1とNAB2の両者を発現する細胞株では、両者の発現は相関する傾向が認められた。このことは、NAB2がEgr-1の負のフィードバックとして機能している可能性を示唆するものと考えられたが、制御調節機構の詳細は、次年度以降の検討課題と考えられた。
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