認知症の代表的な原因であるアルツハイマー病のアミロイド仮説に基づいて、直ちに、臨床試験を開始できる薬物のスクリーニングを行ってきた。その一つとして、漢方由来薬物ベルベリン(berberine)がアルツハイマー病アミロイド蛋白質Aβの産生抑制作用を培養細胞で見いだした。本研究では、ベルベリンの分子メカニズムやマウスでの効果を確認することを目的としてスタートした。その過程で、悪性腫瘍や膠原病における様々な薬物の併用療法に着目して、アルツハイマー病でも併用療法を検討する価値があると判断した。そこでベルベリンと相乗的にAβ産生を抑制する薬物のスクリーニングを行った。その結果、すでに一般的に臨床使用されている薬物Xが特定された(今後の特許申請の可能性のために、本報告書ではXとのみ記載する)。薬物Xは有害事象がほとんど報告されず、また、長期投与の安全性も臨床的にほぼ確立している。しかも、その本来の作用以外にも神経防護作用などが細胞レベル、実験動物レベルで報告されている薬物である。平成21年度はこの薬物Xとベルベリンの相互作用をさらに詳細に検討し、また、これの相乗的にAβ産生を抑制する薬物群のスクリーニングを行う。できれば、臨床的に3剤併用療法の候補を確立したいと考えている。
|