「研究の目的」高血圧、糖尿病、高脂血症の合併症をモデル動物で作製し、メタボリックシンドローム合併症とキマーゼの関連性を明らかにする。 「研究実施計画」高血圧、糖尿病、高脂血症により惹起される合併症モデルを組織学的、生化学的に解析すると共にキマーゼ阻害薬の影響を解析する。 糖尿病モデル:ハムスターにストレプトゾトシン(STZ)を投与することで発症する糖尿病モデルを作製し、STZ投与後3週において血糖値の急激な上昇と膵島破壊を確認した。また、同時期に膵臓中のキマーゼ活性が有意に増加することを見出した。キマーゼ阻害薬投与は、血糖値の有意な低下と膵島破壊の有意な低下を示した。このことは、キマーゼが糖尿病による膵島破壊に重要な役割を果たしている可能性を示唆した。 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデル:ハムスターにメチオニンーコリン欠乏食(MCD)を与えて作製するNASHモデルに対するキマーゼ阻害薬の影響を解析した。MCD食負荷後8週において、肝臓組織で脂肪肝ならびに線維化形成が認められ、キマーゼ阻害薬はそれら肝組織障害を有意に抑制した。このことは、NASH化の発症・進展におけるキマーゼの重要性を示唆する。 腹部大動脈瘤モデル:高脂血症モデル動物として知られるApoE欠損マウスにアンジオテンシンIIを持続投与することで形成される腹部大動脈瘤がキマーゼ阻害薬により有意に抑制された。また、腹部大動脈で著明に増加するマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-9もキマーゼ阻害薬により強く抑制されていたことより、キマーゼはMMP-9の活性化を介して腹部大動脈瘤の発症に関与していると考えられた。
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