「研究の目的」高血圧、糖尿病、高脂血症の合併症をモデル動物で作製し、メタボリックシンドローム合併症とキマーゼの関連性を明らかにする。 「研究実施計画」高血圧、糖尿病、高脂血症により惹起される合併症モデルを組織学的、生化学的に解析すると共にキマーゼ阻害薬の影響を解析する。 糖尿病モデル:ハムスターにストレプトゾトシンを投与し、その後に起こってくる血管内皮障害に対してキマーゼ阻害薬は、有意な障害予防を示した。また、マウス糖尿病モデル(db/dbマウス)の腎臓でのアンジオテンシンII濃度は有意に減少し、蛋白尿が軽減された。これらのことは、糖尿病による血管障害や腎障害の病態機序にキマーゼが重要な役割を果たしている可能性を示唆する。 肝臓線維化モデル:ハムスターに四塩化炭素を与えて作製する肝線維化モデルに対するキマーゼ阻害薬の影響を解析した。四塩化炭素食負荷後8週において、肝臓組織で肝線維化形成が認められ、キマーゼ阻害薬はそれら肝機能障害と肝線維化を有意に抑制した。このことは、肝臓線維化の発症・進展におけるキマーゼの重要性を示唆する。 腹部大動脈瘤モデル:マウスの腹部大動脈にエラスターゼを作用させて作製する腹部大動脈瘤モデルを用いて、キマーゼ阻害薬の効果を検討した。キマーゼ阻害薬による強力なMMP-9阻害と炎症細胞の浸潤抑制が確認されたことより、キマーゼはMMP-9の活性化を介して炎症細胞浸潤を促進し、結果として大動脈瘤進展に深く関与することが示唆された。
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