依存性薬物の長期曝露に伴うL型高電位開口性カルシウムチャネル(HVCC)の機能亢進の機序の詳細を明らかにする目的で、初年度は細胞内カルシウム濃度の上昇に伴う各種HVCCサブユニットの動態変化と細胞内局在の可視化について検討した。先ずmorphineの短期曝露がHVCCサブユニットのmembrane trafickingに影響を与える可能性について、plasma membraneより細胞内への移行に関与するvacuolar protein sorting(Vps)34に着目して検討した。その結果、Vps 34の発現量は初代培養大脳皮質神経細胞へのmorphine曝露の極めて早期より上昇すること、しかもこの反応に細胞内カルシウム応答性のprotein kinase C_γが関与していることが明らかとなった。したがって、依存性薬物の曝露早期には細胞内機能性蛋白質の局在が大きく変化している可能性が推察された。つぎに、各種HVCCサブユニットの局在を経時的に解析するために、HVCCサブユニットの可視化を試みた。Gateway systemによりhumanおよびmouseに特異的なHVCCサブユニットに蛍光色素を導入したplasmidを作製した。さらに、上記plasmidのtransfectionにより得られた細胞におけるsignal強度を上げるために、これら蛍光色素に対する1次抗体を作製した。本plasmidによる株化細胞への導入効率は極めて良好であり、またこのplasmid導入により発現したHVCCサブユニット蛋白は、内在性HVCCサブユニット蛋白と極めて一致した局在を示した。以上の成績より、依存性薬物の連続曝露に伴うHVCCサブユニットの機能変化に影響を与える細胞内調節因子を解析する上で、有用な細胞内局在の可視化法を確立した。
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