依存性薬物の種類に関係なく長期曝露により機能亢進することが明らかとなったL型高電位開口性カルシウムチャネル(HVCC)について、昨年度までにL型HVCCサブユニットの機能変化に影響を与える細胞内調節因子を解析する上で有用な細胞内局在の可視化法の確立、およびアルコールの長期曝露により生じる細胞内への持続的なCa^<2+>濃度の上昇によるストレスに対して、熱ショック蛋白の発現増加を介した防御機構が一部存在することを明らかにしてきた。本年度も引き続きCa^<2+>濃度の上昇に続く情報伝達系の変化から依存性薬物の治療に有用な新規ターゲット分子の候補について検討した。その結果、stored operated Ca^<2+>channelの活性を細胞内Ca^<2+>キレート剤により抑制したところ、L型HVCCの機能亢進は生じなかった。一方、L型HVCCの活性持続に影響すると想定される、(1)L型HVCC C末端部位のリン酸化遅延、(2)L型HVCC遺伝子発現に影響するprotein phosphatase活性の変化、および(3)ミトコンドリアの細胞内Ca^<2+>濃度調節への関与についてそれぞれ検討したが、そのいずれの可能性も無いことが判明した。これらの成績はL型HVCCの機能亢進にはL型HVCCの活性経路とは異なる調節経路が存在する可能性を示唆するものである。そこで、アルコールやモルヒネの連続投与により変化する細胞内情報伝達経路の網羅的検索を試みた結果、新たに細胞内Fe^<2+>含量の著明な増加が生じることを見出した。この細胞内Fe^<2+>含量の上昇はL型HVCC阻害薬により消失したことから、依存性薬物の連続投与により生じる細胞内Fe^<2+>含量の増加は、新たな依存形成メカニズムの経路となる可能性が考えられる。
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