樹状細胞は抗原提示細胞としてナイーブなT細胞を活性化することで、特異的な抗原に対する免疫系の活性化に中心的な役割を果たす。また、最近では自然免疫と獲得免疫をつなぐ重要な役割を担っていることが明らかになってきている。しかしながら、樹状細胞の分化・活性制御の分子機構については未だ十分には分かっていない。本研究では、樹状細胞による免疫系制御の基盤となる樹状細胞-リンパ球間相互作用について、申請者が見出している新しい細胞間シグナルシステムCD47-SHPS-1系(別名CD47-SIRPα系)による制御機構を中心に、樹状細胞の制御メカニズムの解明に取り組み、感染症や自己免疫疾患、がん免疫療法への応用の基盤とすることを目的とする。昨年度までは、SHPS-1(SIRPα)が二次リンパ節内での樹状細胞の分化とホメオスターシスの維持に関与していることを、SIRPα変異マウスの脾臓での樹状細胞を解析することにより明らかにした。今年度は、SIRPα変異マウスの解析をさらに進め、SIRPα変異マウスの脾臓においては野生型マウスと比較してT細胞ゾーンでのCD4陽性T細胞数が減少していること、さらにT細胞ゾーンでのT細胞の発達とホメオスターシスに重要であるケモカインCCL19、CCL21、IL-7が減少していることを見出した。また、骨髄移植モデルを用いることにより、脾臓T細胞ゾーンの発達には、血球細胞上のSIRPαが重要であることを見いだした。一方でCD47欠損マウスもSIRPα変異マウスと同様の表現型を示した。以上のことから、SIRPαと同じくそのリガンドであるCD47は、脾臓におけるT細胞の恒常性の維持に必須であることが示唆された。
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