研究概要 |
本研究計画はCSR SHM制御の分子機構の解明を目指し、その必須分子であるAIDの発現調節並びにSHM導入に関わるDNA修復系のメカニズムを明らかにする事を目的にする。 AIDの発現調節機構を明らかにする為に、AID遺伝子領域のうちヒト、マウス等異種間でよく保存されているexon以外の領域のうち、Luciferase解析で同定されたエンハンサーとして働く部分とイントロン内でサイレンサーとして働く部分に実際に結合する因子を検討した。まず、クラススイッチ刺激(IL-4,TGF-beta,CD40)のシグナル伝達に働くNF-kB,STAT6,Smad4の結合が認められるかどうかをクロマチン免疫沈降法で調べた。その結果、プロモーター上流約7.5-9kbに存在する領域に刺激依存性にこれらの転写因子が結合する事が確認された。加えて、これまでクラススイッチ刺激に関与する事が知られていなかったC/EBPbeta転写因子の結合も認められた事から、luciferase解析の結果と合わせてC/EBP転写因子のAID発現への関与が強く示唆された。以上は培養Bリンパ腫細胞株CH12による知見であるが、LPS IL4でクラススイッチ誘導したマウスの脾臓細胞においても同様の結果が得られる事も確認した。更に、この転写因子群が刺激した脾臓B細胞に発現する事を経時的に観察し、確認した。 これらの発見により、DNA改変活性を持ち発がんにも関与するAID蛋白質の発現誘導が、プロモーター上流約7.5-9kb領域にある刺激依存的エンハンサーにNF-kB,STAT6,Smad4,C/EBPが結合することにより誘導される事、それらに拮抗するサイレンサーによって誤った発現が起こりにくい様に厳密に制御されている事が強く示唆された。この知見は、AIDが、何故活性化B細胞特異的に強発現されるのか、また、低レベルでの異所性発現がピロリ菌等の外因性の病原体に関連して引き起こされて行くのかを理解する為のモデルを提供する。
|