研究概要 |
近年、C型肝炎ウイルスの活性化や薬物摂取による肝炎、肝硬変、肝癌による死亡者数が増加傾向にあり、その発症メカニズムの解明や治療法の開発は社会的急務となっている。しかし、再生不良性の肝障害における肝再生の分子生物学的メカニズムは不明な点が多い。 本研究においては、肝障害初期過程で一過性に誘導されるBMP-2が、肝細胞損傷の修復過程で重要な役割を果たしていると考え、(1)BMPsが肝臓内のどの細胞種により、どのようなメカニズムで産生され、(2)未分化型肝細胞の分化・成熟にどのように関与しているのかどうかを、BMP受容体のコンディショナル・ノックアウト・モデル動物およびBMPs発現レポーター・トランスジェニックマウスを用いて分子生物学的手法により解析する。また試験管内での損傷-修復モデル系を構築しサイトカインなど損傷細胞に由来する再生誘導シグナルを同定し、肝細胞損傷の修復過程を解明することを目的とし次の点を解析した。 1)BMP受容体のコンディショナル・ノックアウトを用いて、肝臓特異的にアデノウイルスベクターを介してCre組み換え酵素を導入し、肝特異的BMPRIA欠損マウスを作成し、CC14により肝障害を誘導した。その結果、肝特異的BMPRIA欠損マウスにおいては、損傷修復の遅延が観察された。 2)試験管内での損傷修復機構解明のため、未分化型肝細胞株、HY1, HY2, HY3を樹立した。 この細胞株の分化誘導のメカニズムを解析した。その結果、コラーゲン、TGFb、HGF、OsMの刺激により段階に幹細胞への分化が観察された。
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