同種造血幹細胞移植を行った患者の爪についてshort tandem repeat (STR)解析を行ったところ、ドナーDNAを非常に高率に検出した。また、移植後長期間経過した症例においてもドナーDNAの混在を認めた。この結果は、ドナー細胞が非造血組織へ分化し、移植後長期間にわたって患者の爪の構築に関与していることを示唆している。 本研究の目的は、同種造血幹細胞移植後患者の爪の構築に関与するドナー細胞を同定し、爪における恒常的キメリズムの成立機構を明らかにすることである。そのために、同種造血幹細胞移植を受けた患者の爪からDNAを抽出し、STR解析によってドナーDNAの混在率を算出する。さらに、臨床所見との関連について検討する。同種造血幹細胞移植には骨髄移植、末梢血幹細胞移植、膀帯血移植、ミニ移植など様々な方法が存在する。各々の移植を行った患者の爪のキメリズム解析を行うことによって、恒常的キメリズムの成立機構の解明につながることが期待される。現在までに17症例より検体を採取し、解析が終了した5症例について第10回日本再生医療学会総会で報告した。 今後はマウスを用いて爪に分化したドナー細胞の同定を試みる。マウスより骨髄細胞を採取し、セルソーターを用いて各細胞群に分け、それぞれを放射線照射したマウスに移植する。各群のマウスの爪におけるドナーDNAの混在率を算出し、移植した細胞群との関連について検討する予定である。
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