研究概要 |
生後におこる血管形成過程は必ずしも個体の発達過程でみられる血管形成機構をそのまま繰り返しているわけではない。そのため腫瘍や糖尿病性網膜症などで既存の血管系からどのように新生血管が現れてくるかをあきらかにすることは新たな治療手段の開発につながる可能性がある。FOXO1は個体の発達過程でみられる血管形成に必須であるが、生後の血管新生にも関与するのか、そして関与する場合に発達過程での機能と何が違うのかは必ずしも明確になっていない。このことを明確にする目的で、今年度はTie2-CreによりFOXO1を生後に欠損するマウスを用いて以下の3点を検討した。1.生後に形成されてくる網膜血管の形成過程におけるFOXO1の機能を明らかにするため、tamoxifenの腹腔内投与により全身の血管でFOXO1を欠損させた。全身に影響があるため網膜の血管形成以外の影響を除けないが、少なくとも血.管伸長が悪くなる傾向が認められた。この点を明確にするため眼球内にtamoxifenを投与することによって局所的にFOXO1を欠損させることで確認する予定である。2.VEGF/bFGFを混ぜたmatrigelをシリコンチューブに詰めた系を用いて侵入血管量を測定するアッセイを試みたが十分な血管の侵入が見られなかった。そこでmatrigelの量を10倍に増やして、これをそのまま皮下に埋め込む系に変更した。現在,埋め込んでおく時間などの検討を行っている。3.腫瘍の成長に及ぼす影響を検討するため、LLC肺ガン細胞またはB16メラノーマ細胞を皮下に埋め込み2週間後に腫瘍の成長の変化を観察した。FOXO1の有無によって成長そのものには有為差は認められなかった。現在、その組織を用いて腫瘍内の血管、リンパ管について免疫組織化学法で詳細な検討をしている。あきらかになった問題点の改善をおこなって結果をより明確にする予定である。
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