私達はこれまでATF-2遺伝子ファミリーメンバーのin vivoでの生理的な役割を理解するためにそれぞれの遺伝子欠損マウスを作製して解析してきた。本研究では以下の事を明らかにした。 1、ATF-7遺伝子欠損マウスは音に対する驚愕実験とプレパルスインヒビション実験で異常を示し、セロトニンに関係する行動異常が見られた。DNAマイクロアレーを用いて脳幹部で発現している遺伝子を解析すると背側縫線核でのセロトニンレセプター5B(HTR5B)の過剰発現が明らかに成った。そこで、p38-ATF7の経路がどのようなメカニズムでHTR5Bの発現制御を行い、行動異常に繋がるのかそのメカニズムを解析した。先ず、縫線核由来の神経細胞RN46Aを用いて、ATF-7はヒストンメチル化酵素ESETをリクルートしている事を免疫供枕実験で明らかにした。また、ATF-7遺伝子欠損マウスではHTR5B転写調節領域のヒストンH3K9のトリメチル化が野生型と比較して有意に低下していた。以上から本来ATF-7はESETをリクルートしてH3K9のメチル化を促進する事によってHTR5Bの発現を抑制していると考えられる。 2、ATF-2^<+/->CRE-BPa^<+/->のダブルヘテロ欠損マウスはやせ形の表現型を示した。MEFを用いてin vitroで脂肪細胞への分化実験を行うとATF-2とCRE-BPaがPPARγ2の転写調節領域内のCREに直接結合して発現を促進している事が分かった。 そこで、ATF-2遺伝子ファミリーの上流で働くp38の阻害剤をマウスに直接経口投与すると、体重の増加が40%以上抑制されることが明らかになった。以上の結果から脂肪細胞の分化にはp38-ATF-2経路が関与する事が明らかに成った。p38の阻害剤を用いて肥満の予防に役立つ薬剤の開発を目指したい。
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