がん抑制因子miR-34aによる細胞増殖制御機構について、分子レベルでの解明を行った。miR-34aは、p53で発現誘導されるとともに、p53を活性化する、いわゆるポジティブフィードバック制御が存在することを明らかにした。miR-34aは、p53の抑制因子であるSIRT1の発現を直接抑制できることを見出した。また、miR-34aの結合配列を欠失した、SIRT1を細胞へ発現させることで、miR-34aによるp53の活性化が抑制されることも分かった。この細胞内分子サーキットは、発がんストレスに暴露された細胞の内在性防御反応として極めて重要であることが判明した。 同様に、ストレスにより発現誘導される新たながん抑制因子miRNAを同定した。miR-Xは、p53により発現調節されること、また、p21を直接抑制することにより、細胞周期停止から、アポトーシスへと細胞の表現型を誘導できる、細胞内分子スウィッチであることを分子レベルで明らかにした(論文投稿中)。興味深い事に、miR-Xはヒト大腸がん検体の70%以上で遺伝子の型アリル欠失を認め、発現が低下してることを明らかにした。この中には、p53遺伝子は、正常(欠失・突然変異なし)であるにも関わらず、miR-Xのみが、欠失・発現低下を示す症例が存在した。したがって、miR-Xは、大腸発がんにおいて、がん抑制遺伝子として機能していることが示唆された。 このように、細胞が有する内在性がん抑制因子ネットワークを活性化するmiRNAを同定・解析することにより、新たに発がんと深く関連する細胞内ネットワークの同定が可能となる事を示した。
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