miR-34は、がん抑制因子p53で発現制御されるがん抑制的miRNAである。miR-34aは、DNA傷害などのストレスに応答し、p53依存的に発現が亢進する。miR-34aの活性化は、E2FファミリーやCDK4の発現抑制を介して、細胞周期の停止・細胞老化を誘導する。また、miR-34aによるp53のポジティブフィードバック制御についても明らかにした。しかしながら、大腸がん臨床検体におけるmiR-34aの発現低下は、30%以下であり、他に強力ながん抑制因子miRNAの存在が示唆された。したがって、新たながん抑制的miRNA単離のため、miRNAウィルス発現ライブラリーとマイクロアレイ解析を組み合わせた機能スクリーニング法を開発した。その方法と、ゲノム網羅的解析を用いて、新たながん抑制遺伝子miR-22を単離した。miR-22は、強力な細胞増殖抑制機能を有しており、p53依存的アポトーシスを選択的に引き起こすことが可能である。生化学的手法を用いて、miR-22の標的とする分子の一つとして、p21を同定した。事実、miR-22存在かでは、DNA傷害によりp53が活性化されても、p21の発現誘導は抑制されたままであることが判明した。また、miR-22存在下では、低用量の抗がん剤処理でがん細胞を効率よくp53依存的アポトーシスへ導けることを証明した。さらに、miR-22もp53によって、発現誘導されるが、その活性化は、アポトーシスが誘導されるストレスに限られていることを見出した。興味深いことに、miR-22遺伝子座は、70%以上の大腸がん検体において、片アリル欠損を示し、それに伴った発現低下が認められた。これらの結果から、miR-22は新規の大腸がん抑制遺伝子の候補であり、細胞がストレスに応答してアポトーシスを選択する際に、重要な役割を果たしていることを証明した。
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