研究概要 |
ウイルスベクターを用いたマウス胚性幹細胞に外来遺伝子を安定導入する手法を用いて免疫制御性細胞特異的なT細胞抗原受容体cDNAを遺伝子導入した。この時、T細胞特異的発現を導くプロモーター、および恒常的発現を担保するプロモーターを使用した2種類のウイルスベクターを作製した。これら遺伝子組み換え胚性幹細胞をTリンパ球へ分化誘導させ、目的の免疫制御性細胞が産生されているかフローサイトメーター等を使用して検討したが、目的細胞は得られなかった。一方、T細胞特異的発現を導くプロモーターとエンハンサーを組み合わせたカセットに目的cDNAを組み込んだベクターを作製し、これに薬剤耐性遺伝子を持たせたコンストラクトを胚性幹細胞に遺伝子導入し、薬剤耐性クローンを纏めてT細胞へ分化させた場合でも同様の結果であった。以上の結果はES細胞から免疫制御性細胞産生のために上記以外の別のパラメーターを考慮する必要があることを示唆する。 また、ヒト免疫制御性細胞を作製するため、ヒトES細胞の培養を開始した。まず、常法に則り、ヒトES細胞を未分化状態で培養、増殖させる技術基盤を当研究室内で確立した。つづいてヒト免疫制御性細胞分化誘導の基本となるヒトES細胞からのTリンパ球分化誘導につき検討した。これまでOP9というフィーダー細胞を使用してヒトES細胞からの血液系細胞への分化誘導が試みられているので、まず京都大学再生医学研究所から分与されたヒトES細胞株を使用して実験を行った。未分化状態のヒトES細胞を数十から数百の細胞塊としたのち、十分にコンフルエントになったOP9上に蒔き、系時的に血液幹細胞、リンパ球細胞マーカーであるCD34,CD43,CD45などの発現を解析した。その結果、これらマーカーの発現が分化に伴って観察された。
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