研究課題
個体の免疫バランス調節に重要な役割を果たす免疫制御性T細胞を胚性幹(ES)細胞からin vitroで産生する試みを行なった。生体中には種々の免疫制御性T細胞が存在し、或る細胞群は免疫強化能を発揮するのに対して、別の細胞群は免疫抑制能を示して免疫反応を制御している。これら細胞群の機能破綻はがん・アレルギー・感染・自己免疫疾患などの病態と深く関連しており、免疫寛容にも重要な役割を担っていると考えられている。現在の研究は動物個体内での当該細胞の機能解析あるいは当該細胞を分離・精製してその性状を解析するという点に重点が置かれている。しかし、当該細胞の持つ生理的意義を更に深く理解し、これらを応用研究に資する場合にはこれら細胞をin vitroで大量に産生する必要があるが、かかる要求に応える研究は従来存在しなかった。そこで本課題ではこの要求に応えるべく、ES細胞から免疫制御性T細胞の選択的分化誘導を目指して研究を行った。我々は先の研究でゲノムにおける遺伝子再構成済みのT細胞抗原受容体(TCR)の存在がES細胞からの当該細胞選択的分化誘導に重要であることを示した。そこで、本研究ではレンチウイルスベクターなどを用いてES細胞に免疫制御性T細胞特異的なTCRを発現させ、当該細胞への分化誘導を行った。実験にはマウス,サルESを使用してこれらにマウスおよびヒト免疫制御性T細胞特異的なTCRを恒常的発現、またはT細胞特異的発現を導くプロモーターにて強制発現させた。これらのES細胞をT細胞分化誘導条件下で培養し、フローサイトメーター等にて目的とする細胞の存在を調べたが目的の細胞群は得られなかった。この結果はES細胞からの免疫制御性T細胞の選択的分化誘導にはその細胞自身のiPS化もしくは核移植による初期化(クローン胚)が必要であること示唆している。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Environ.Health.Prev.Med.
巻: (In press)
J.Biol.Chem.
巻: 285 ページ: 37884-37894