本年度はGb3合成酵素(G3S)遺伝子を高発現するTgG3Sマウスを作製することを目的として実験を進め、分担研究者の松田氏によりC57BL/6Jマウスの受精卵にDNAフラグメント{(ヒトG3S cDNA)を発現ベクター(pCXN2)に組込み、BamHI及びSalI処理後、発現ユニットのみを含む3.3kb}をマイクロインジェクションし、仮親(ICRマウス)の子宮に入れて産仔を得だ。離乳した36匹のマウスについてマウス耳片より調製したDNAについて、PCRによりG3S遺伝子を増幅し、遺伝子導入の有無を判断した。6匹に遺伝子導入が確認されたものの安定して発現が認められたものは1系統のみであった。 10週齢TgG3Sマウスの心臓、腎臓、肝臓、脾臓、小腸、肺、脳、筋肉についてG3S遺伝子の発現レベルをRT-PCRにより野生型マウスと比較したところ、すべての臓器において顕著なG3S遺伝子発現レベルの上昇が確認された。また、各組織のGb3量も野生型マウスに比べ顕著に高く、導入された遺伝子の発現上昇が酵素量の増加を導き、Gb3合成の活発化に寄与することが確認された。 次に、TgG3Sマウスとマウスα-Gal A遺伝子を欠損させたKOマウスと交配し、α-Gal A活性を持たないTgG3Sマウス(TgG3S/KOマウス)を作製し、さらにすでにホモでライン化してあるTgM/KOマウスと交配することで、変異α-GalA遺伝子とG3S遺伝子の両遺伝子を入テロで持つKOマウス(TgM/G3S/KOマウス)を作製した。これまでのシャペロン研究用モデルマウスであるTgM/KOマウスでは腎臓ではGb3の軽度な蓄積が認められているが、心臓では全く認められない。これに比べ、TgM/G3S/KOマウスでは有意な蓄積が認められ、心臓でもシャペロン効果の検討可能なマウスの作製に成功した。
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