研究概要 |
本研究課題の目的は、赤芽球におけるヘム生合成系の律速酵素である赤芽球型5-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS-E)の機能が翻訳後修飾によりどのように調節されているのかを明らかにすることである。現在まで, ALAS-Eタンパク質のミトンドリアへの移行がヘムにより調節されていること、また、ALAS-Eタンパク質はスクシニルCoA合成酵素と結合することが報告されているが、本研究では、それ以外にどのような修飾がなされるかを明らかにするために、ALAS-Eタンパク質のカルボキシ末端にFLAGタグを付与したものを培養細胞で過剰発現させた後に抗FLAG抗体を用いて免疫沈降を行い、その免疫沈降物の中にどのような分子が含まれているかを検討した。その結果、免疫沈降された分子の中に、SDS-PAGEとWestern blot法によりALAS-Eタンパク質よりも分子量が明らかに大きい分子が含まれることを見いだした。この分子はFLAGタグに対する抗体で認識されることから、ALAS-E5タンパク質に他の分子が共有結合しているものと考えられる。また、この分子が免疫沈降物に含まれる割合は、細胞内のヘムの量に応じて変化することから、この分子量の大きな分子はヘムによるALAS一正の発現調節(フィードバック調節)に関与している可能性が高いと考えている。ヘムは様々なタンパク質の補欠分子として機能することが知られているが、現在までにヘムがこのような分子複合体の形成に関わっているという報告は無く、本研究を発展させることにより、生体内におけるヘムの新たな機能が明らかになる可能性がある。平成21年度にはこの分子複合体の中にどのような分子が含まれているのかを質量分析装置を用いて明らかにする予定である。
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