研究概要 |
赤芽球型アミノレブリン酸合成酵素(ALAS2)分子にタグを付与して293細胞内で過剰発現させWestern blot解析を行ったところ、予想される大きさの分子に加えて、より大きな分子(仮にALAS2-Lと称する)も検出されることが明らかとなった。また、このALAS2-Lの発現量は細胞内のヘムの量に応じて変化することから、ALAS2-Lの形成はヘムによるALAS2の発現制御にフィードバック機構として関与している可能性が高いと考えられる。本年度は、ALAS2-Lの構成成分を明らかにするため、免疫沈降法により精製してSDS-PAGEにより分離した後にトリプシン処理を行い、さらにHPLCと質量分析を組み合わせた方法(LC-MS)により、ALAS2-Lの構成成分を明らかにすることを試みた。その結果、ALAS2-LにはALAS2分子が含まれている事が明らかとなったが、それ以外のタンパク質の関与の有無については現在さらに検討中である。 上記1)の検討に加えて、ALAS2タンパク質にSmall Ubiquitin-like Modifier(SUMO)が特異的に結合するかどうかをあきらかにするため、大腸菌でALAS2とglutathion S transferase(GST)との融合タンパク質とSUMO化に必須なE1,E2酵素、さらにはSUMO1を共発現させ、glutathion sepharoseを用いて精製して調べたところ、ALAS2タンパク質にはSUMO1分子が結合しうることが明らかになった。 これらのALAS2の翻訳後修飾は現在までに報告されておらず、ALAS2の機能発現における役割、さらには赤芽球の分化における役割を明らかにする事は、正常な造血機構および様々な貧血の病態を明らかにする上で非常に重要であると考えられる。
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