研究概要 |
(腫瘍特異的融解性変異株の選別と解析) 腫瘍融解性SINレプリコンの開発のために、増殖能が高いSINクローンを選別する戦略により変異株の選別を平成20年度に行った。その結果、HeLa細胞に対する細胞傷害性が高いクローンを選択し、ov-SINと命名した。ov-SINには、5'-UTRのnt35にG→Aの変異およびnsp2の438番アミノ酸にP→Lの変異が存在した。ov-SINは、非癌細胞であるVero細胞の増殖期に対しても細胞傷害性を示したが、静止期の正常ヒト繊維芽細胞および静止期のVero細胞に対しては細胞傷害性を示さなかったことから、SINの腫瘍特異性には、細胞周期が関連していることが明らかとなった。 (腫瘍特異的融解性レプリコンの作成と評価) 次に、ov-SIN cDNAの5'UTR,nsP1,nsp2,nsP3,nsP4領域のcDNAを調整した。SINレプリコンcDNAをCMVプロモーター下流に組込んだ一連のSINレプリコン発現プラスミド、およびSINレプリコンcDNAをT7プロモーター下流に組み込みin vitro合成したSIN RNAレプリコンによる細胞傷害性を検討した。 その結果、ov-SINレプリコンは、HeLa細胞に対してアポトーシスを誘導するが、Vero細胞および正常ヒト線維芽細胞に対するアポトーシス誘導能が極めて低く、ov-SIN自体よりも腫瘍融解特異性の高いことを確認した。また、CMVプロモーターにより強制発現させたSINレプリコンよりもin vitro合成したSIN RNAレプリコンの方が非癌細胞に対する傷害性が低く、腫瘍融解特異性の高いことが明らかとなった。更に、3' UTRを組込んだRNAレプリコンは細胞傷害性が低くなるが正常細胞への毒性が低く、3' UTRは腫瘍融解特異性を高めることが明らかとなった。
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