研究概要 |
神経堤細胞に特異的に発現しているホメオボックス遺伝子Ncx(Neural crest homeobox)のKOマウスは神経細胞死の障害による腸管神経節神経細胞数の増加が認められ、病理組織学的にもヒトのヒルシュスプルング病類縁疾患に一つであるIntestinal Neuronal Dysplasia(IND)と類似しており、そのモデルマウスとして位置づけられている。本課題ではNcxを中心とした転写因子ネットワークを解析することで神経堤細胞分化・増殖・死の制御機構を明らかにすることにより、ヒルシュスプルング病をはじめとしたNeurocristopathyの病態解明と治療法を開発することを目的とする。我々はNcxにより発現調節をうけている遺伝子を同定した。本研究ではその1つであるNczf(Ncx downstream zinc finger protein)およびPrickleについて細胞株およびノックアウトマウスを用いてin vitroおよびin vivoにおける機能解析をすすめている。本年度はこれら遺伝子の機能に関して以下のことを明らかにした。 1.Nczfは繊維芽細胞株およびマウス胎児繊維芽細胞において細胞周期のG1期に特異的に発現することが明らかとなった。またNczf KO ES細胞を作製し細胞周期制御について解析したところ血清飢餓によるG1停止がおこらないことが明らかとなった。 またp21,p16,p53などの遺伝子発現にはKOとWTでの差は認められなかった。 2.Nczfヘテロマウスでは腸管神経細胞の増加が結腸遠位部よりも近位部において強く認められることがわかった。また腸管の運動能をX線透視によるバリウム排泄時間を指標に解析したところコントロールとの差は認められなかった。 3.Prickle蛋白は神経芽細胞腫細胞株において平面内極性蛋白Dsh等を介して神経突起伸長の制御に係っていることを明らかにした(Neuroscience letters, 2009)。
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