研究概要 |
神経堤細胞に特異的に発現しているホメオボックス遺伝子Ncx(Neural crest homeobox)のKOマウスは神経細胞死の障害による腸管神経節神経細胞数の増加が認められ、病理組織学的にもヒトのヒルシュスプルング病類縁疾患に一つであるIntestinal Neuronal Dysplasia(IND)と類似しており、そのモデルマウスとして位置づけられている。本課題ではNcxを中心とした転写因子ネットワークを解析することで神経堤細胞分化・増殖・死の制御機構を明らかにすることにより、ヒルシュスプルング病をはじめとしたNeurocristopathyの病態解明と治療法を開発することを目的とする。我々はNcxにより発現調節をうけている遺伝子を同定した。本研究ではその1つであるNczf(Ncx downstream zinc finger protein)について細胞株およびノックアウトマウスを用いてin vitroおよびin vivoにおける機能解析をすすめている。本年度はこれら遺伝子の機能に関して以下のことを明らかにした。 1.Nczfは繊維芽細胞株およびマウス胎児繊維芽細胞において細胞周期のG1期に特異的に発現することが明らかとなった。マウス胎児繊維芽細胞(MEF)においてNczfの発現をノックダウンすると細胞増殖の抑制が認められた。細胞周期関連の遺伝子について発現を調べたところCDK nhibitorであるp27のmRNAレベルでの発現が増加している事がわかった。一方、p53,p21やサイクリンなどの発現は変化がなかった。 このことから、NczfはMEFにおいてp27の発現を抑える事により細胞周期を制御していることが明かとなった。 2.Ncxノックアウトマウスは腸管神経の増加と巨大結腸を発症する。また自然経過において血便を伴った腸管炎症が発症する事を見出した。そこでNcx KOおよび野生型マウスにそれぞれDSSを飲水させ、実験的腸炎を誘導した。その結果、Ncx KOマウスは非常にDSS腸炎に感受性が高く、血便を伴う激しい腸炎を早期に発症し死亡する事が明かとなった。このメカニズムについて腸管神経の異常との関連等に月現在検討中である。
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