昨年度と同様、核が緑色蛍光蛋白(Green Fluorescent protein;GFP)、細胞質が赤色蛍光蛋白(Red Fluorescent protein;RFP)で標識された2色のがん細胞を用いて、細胞死の形態的変化をリアルタイムに観察した。 昨年度は波長の異なる紫外線を用いて肉腫細胞の細胞死の形態を観察し、様々な細胞死の形態学的特徴を明らかにした。本年度はそのデータを蓄積すべく、肉腫細胞に限らず肺癌細胞や膵癌細胞などの上皮系腫瘍細胞も用いて、細胞に紫外線を照射し細胞死を誘導してその形態の違いを観察し、さらに新たな細胞死の形態的特徴が存在するかなどについて検討した。 本年度の実験からは、紫外線に対する感受性・アポトーシスやネクローシスといった細胞死の割合が、がん細胞の種類によって大幅に異なるということがわかった。また波長による感受性の違いは、細胞間に大きな差異がないことも明らかになった。しかしながら、細胞死の形態については、昨年報告した以上の新たな細胞死の形態を発見することができず、癌細胞と肉腫細胞の細胞死の形態学的違いは、はっきりしなかった。 これまでの観察を総合すると、細胞死の形態にはアポトーシスとネクローシスという2つのカテゴリーでは分類しきれない数種類の細胞死が存在すると考えることができる。今後は、これまでのデータを解析した上で、細胞死の新たな形態学的な分類化を行い、その違いがアポトーシスやネクローシスに関連する細胞内シグナルなどと、どの様な関連があるかを深く研究する。また、これまで行ってきた研究を、我々が開発したマウススキンフラップモデルに応用し、in vivoでの細胞死の形態観察へと発展させていく。
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