小胞体内での構造異常蛋白質蓄積により誘導される小胞体ストレス経路は、細胞内外からの様々なストレスにより誘導され、細胞保護に働く。しかし、それらのストレスが過剰な場合には、小胞体ストレス誘導性転写因子CHOPの誘導などのアポトーシス経路が誘導され障害細胞全体が除かれる。これまでに我々は、LPSを気管内投与して作成したマウスの肺の炎症をモデルとして、小胞体ストレス系の炎症病態への関与について解析を行ない、小胞体ストレス-転写因子CHOP経路がカスパーゼ11の誘導を介して、IL-1βの活性化、分泌に働く新たな経路の存在を明らかにした。これにより、小胞体ストレスーCHOP経路が、炎症反応の調節にも働くことが明らかとなった。しかし、これまで小胞体ストレス誘導性アポトーシスに関与する因子と考えられてきたCHOPが、炎症刺激によって誘導された場合にはアポトーシス誘導に働かず、サイトカイン経路活性化に働く分子機構は明らかではなかった。 本年度は、まず、重症実験膵炎モデルにおいても小胞体ストレス-CHOP経路が誘導され、病態増悪に働くことをCHOPノックアウトマウスを使用した実験で明らかにした。また、同じく小胞体ストレス-CHOP経路が誘導されるにもかかわらず、炎症刺激の場合にはアポトーシスが誘導されない分子機構について解析を行なった。LPSによる炎症刺激を受けたマクロファージでは、小胞体ストレスセンサーのうち、PERKの活性化がおこらず、そのために、下流のアポトーシス経路が誘導されないこが明らかとなった。ところが、小胞体機能保護に働く分子の多くの誘導に関与するIRE1経路は、LPSによってもアポトーシス誘導刺激と同様に、早期から活性化された。今後は、さらに刺激の違いにより活性化される小胞体ストレスセンサーに違いが生じる分子機構の解析を進めたい。 ---------------------[End of Page 1]---------------------
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