研究概要 |
脳におけるシナプス形成・可塑性のメカニズムの解明は、認知障害や精神神経疾愚のさらなる理解や治療に必須である。私共は癌遺伝子産物Rasの類縁分子のRap2に着目し解析しているが、Rap2の上流分子や下流分子は連鎖解析や変異解析において精神神経疾患との強い関連が報告されている。その前から私共はRap2が下流分子としてストレス応答性MAPキナーゼJNKを制御するMAPKKKキナーゼ(MAP4K)を同定しており(Rap2-MAP4K系)、ラット海馬シナプスでも追試されてRap2-MAP4K系がJNKを介してAMPA受容体シナプス伝達の抑制に関与すると報告された。しかし私共は海馬Rap2-MAP4K系の標的分子はJNKだけでないと考えており、実際、シナプスPSD蛋白質TANC1をRap2-MAP4K系の標的分子として同定・報告している。さらにRap2のrecycling endosome(RE)局在を報告したが、受容体の膜輸送に関与する可能性が考えられ、実際、最近MAP4Kと膜輸送関連分子複合体との相互作用を見いだしている(未発表)。また、Rap2のユビキチン化がMAP4Kを介してシナプスの機能と形態を制御することも報告しているが、最近MAP4Kの一つTNIKが多くのシナプスPSD分子を安定化することも報告した(Wang et al.2011,in press)。各種Rap2ノックアウトマウスの作成も着実に進行中で、個体レベルの解析が待たれる。
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