研究概要 |
本研究計画では、ヘパラン硫酸の生合成に関与する糖転移酵素EXTL3遺伝子を膵β細胞特異的に欠失したマウスを作製し、膵β細胞の発生・分化、機能におけるEXTL3の役割を明らかにするとともに、膵β細胞特異的EXTL3欠損マウスを糖尿病モデル動物として開発・利用する。 当該年度では以下の成果が得られた。 1.膵β細胞特異的にEXTL3遺伝子を欠失したマウスの作製 申請者らが作製した膵β細胞特異的にCreレコンビナーゼを発現するマウスを、EXTL3遺伝子の一方の対立遺伝子にloxP配列を有するヘテロ変異マウスと交配していくことにより、EXTL3遺伝子内にloxP配列が挿入された変異遺伝子をホモに持ち、膵β細胞でCreレコンビナーゼを発現するマウスを得た。このマウスでは膵β細胞特異的にEXTL3が欠失することになる。膵β細胞の免疫組織染色、単離膵β細胞のSouthern blot, RT-PCR, Wegtern blot解析によりEXTL3の欠失を確認した。 2.膵β細胞特異的EXTL3欠損マウスの膵ランゲルハンス島の形態の解析 膵β細胞特異的にEXTL3を欠失したマウスでは、膵ランゲルハンス島の形成過程で異常を生じる可能性が考えられる。そこでEXTL3欠損マウスの膵ランゲルハンス島の形態を、ヘマトキシリン・エオジン染色、抗インスリン抗体を用いた免疫染色により胎児期から成獣になるまで時期を追って観察したところ、2-8週齢のEXTL3欠損マウスではランゲルハンス島あたりのβ細胞の比率が有意に減少しており、ランゲルハンス島に特徴的なマントル・コア構造も認められなかった。また2週齢のEXTL3欠損マウスでは膵β細胞の増殖能がコントロールマウスの29%に低下していた。 以上の結果から、EXTL3が出生後のβ細胞増殖に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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