研究課題
平成20年度から開始された本研究は最終年度にあたる。当初に立案した計画は順調に実施にうつされ、大きな成果をあげつつある。最終年度は研究の継続と総括に重点をおいた。周知の如く、発癌は多段階過程で進行し癌遺伝子の活性化と癌抑制遺伝子の不活性化を伴う。特に癌抑制遺伝子はジェネティック(DNAの配列変化を伴う)、エピジェネティック(DNAの配列変化を伴わないがピストンのアセチル化やDNA・ピストンのメチル化等の生化学的修飾を介して転写変化に帰する)異常により両親由来の2コピー遺伝子の機能が少なくとも2段階で変化する(癌抑制遺伝子Rbに代表されるKnundsonの2ヒット理論)。本年度の重点項目は以下の通りである。●Fhit蛋白質リン酸化の意義【方法】Fhit欠損および対照野生型マウスを用い、化学発癌(N-メチルベンジルアミン[NMBA]を発癌のイニシエーター+プロモーターとして作用させる)を投与、前胃上皮に腫瘍を作成。この腫瘍に対してFhitリン酸化欠損変異体を発現させるアデノおよびレンチウイルスベクターを経口、腹腔に投与。また細胞株(Fhit欠損マウス線維芽細胞と癌細胞)に同様に遺伝子導入。得られた腫瘍組織中の細胞における生命機能の作動原理メカニズムの解明と癌での制御破綻をあきらかにした(FRET蛍光分子プローブ、酸化ストレス応答測定等)●高精度の発現解析Fhit欠損および対照野生型マウスを用い、これまでに得られたデータ(ミトコンドリアDNAを欠損したρ0[ローゼロ〕細胞、Fhit改変マウス由来のミトコンドリアDNAを血小板融合で導入した「サイブリッド」)と比較検討することにより、嫌気性解糖とのバランス(Warburg Effect)を究明した。
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