本研究では、骨を分解する破骨細胞の活性化と制御の分子機構の解明めざしている。とりわけ本年度は、(1)骨分解を誘導する開始因子とその受容体の探索、(2)環状接着帯の形成に関わる細胞骨格再構築のメカニズムの解明、(3)リソソームの放出に至る細胞内輸送とこの輸送を支える微小管ダイナミクスの解明、に焦点をあてて研究をおこなった。 その成果として、(1)エネルギー分子であるATPがP2X7受容体(イオンチャンネル型核酸受容体)を介して、(2)アクチン細胞骨格を再構成するシグナルを誘導し、経時的に、骨上の環状接着帯であるシーリングゾーンを形成する事、さらにその際、(3)微小管を構成するαチューブリンのアセチル化レベルが変動することにより、骨分解顆粒の輸送と放出が制御される事、および、このアセチル化と脱アセチル化の調節には、チロシンキナーゼSykが関与する事を、脱アセチル化阻害剤、および、Syk-shRNAを破骨細胞に導入する事により見いだした。また、これらの成果は、Genes to Cells(2009年7月掲載予定)およびJ Biochem.(2009 145(3):267-73)に発表した。今後は、さらに発展させて、骨溶解に必須の標的分子として、大麻受容体CB_2とチロシンキナーゼSykの下流分子を加え、上記骨溶解プロセスにおける役割を明らかにする。さらに、破骨細胞におけるATP受容体シグナルの制御機構を、P2X7と他の受容体とのクロストークも含めて明らかにする。
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