研究概要 |
昨年度(平成21年度)までの研究において、骨を分解する破骨細胞の活性化と制御に関わる分子メカニズムとして、ATPが受容体P2X7を介して骨吸収開始因子として機能する事を見いだし、ATP/P2X7シグナルが、アクチン細胞骨格の再構成によるシーリングゾーンの形成と骨分解顆粒の輸送と放出を誘導する事、この一連の反応において、チロシンキナーゼSykが、微小管のアセチル化/脱アセチル化の制御を介して骨の溶解に必須の役割を果たしている事を示した(Genes to Cells,14:871-84)。今年度は、これらの成果をさらに発展させるため、1)骨分解顆粒の輸送と放出においてSykの下流で機能する分子の探索、2)同プロセスにおいて低分子量Gタンパク質Rab27aの果たす役割についての検討を開始した。ヒト末梢血由来の単球およびヒト白血病細胞株HL60を、破骨細胞様に分化誘導してin vitroの実験をおこなった。まず、1)Sykノックダウン型HL60と野生型HL60における、ATP刺激依存性のチロシンリン酸化の差異を比較した。野生型でのみチロシンリン酸化をうける分子複合体の存在を確認したが、未だ同定に至っていない。さらに、2)Rab27aの機能を解析するため、HL60にshRNA-Rab27aを導入したRab27aノックダウン型HL60を作成して、野生型HL60と比較検討した。ATP刺激依存性のリソソームの動態変化には大きな差異が見いだせなかったが、引き続いて起こる活性酸素の産生が抑制されていた。今後は、これらの結果をさらに発展させ、破骨細胞の活性化に必須のSykの下流分子の同定、Rab27aの機能、とりわけ活性酸素を介した破骨細胞の活性化制御への関与、およびATP産生オルガネラであるミトコンドリアの機能が破骨細胞の活性化へ及ぼす影響について検討する。
|