研究概要 |
染色体転座を任意に誘導できる実験を開発し、これを用いて転座生成の機構と転座の影響を解析することを目的として以下の実験を行った。緑色蛍光タンパクGFPと赤色蛍光タンパクDsRed遺伝子を分断し、loxPをはさんで互いに融合させた遺伝子2種(Site1とSite2)を作成した。Site1,Site2に含まれる2つのloxPの間で組み換えがおこると細胞は緑色蛍光と赤色蛍光を発する。この発現ユニットの両側に目的とする遺伝子に相同な配列を挿入した。上流と下流の相同領域のうち一方を4kb、他方を2kbとし、それらはゲノム情報に基づくPCRにより増幅単離した。ジフテリアトキシンA遺伝子と直線化制限酵素部位を配置した。これをターゲティングベクターとし以下の実験に用いた。最初に、Nalm-6細胞にタモキシフェンにより活性化できるCre(MerCreMer)を安定導入した。次に、ターゲティングベクターを常法によりMerCreMerを発現するNalm-6細胞に導入し、相同組換え体をPCRとサザンブロット法によるスクリーニングの後に得た。遺伝子ターゲティングを2回行い、異なる2つの染色体にloxP部位が導入された細胞が得られた。これを用いて以下の実験を行った。IgH(14番染色体)にSite1を導入したNalm-6細胞を作製し、さらにIgHから1Mb,6Mb,11Mb,あるいは40Mbはなれた領域にSite2を導入した細胞を作製した。さらにタモキシフェンを7日間培地に添加し、Creによる組換えを誘導し、組換え頻度をフローサイトメトリーにより測定した。Site2がSite1と同じ染色体に導入された細胞ではCreによる組換え頻度と組換え点間の距離は反比例の関係であることが分かった。このことから組換え頻度は遺伝子間の距離の指標となることが分かった。
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