研究概要 |
昨年度開発した染色体レベルの遺伝子操作を可能にしたベクター系を用いて、疾患の原因となる転座の再現を試みた。一つ目はc-Myc/IgH転座を再現した。Nalm-6ヒトプレB細胞株の8番染色体c-Myc遺伝子にSite2を導入し、14番染色体IgHにSite1を導入した。この細胞にCre組換え酵素を7日間作用させるとSite1およびSite2に含まれるloxP部位の間で組換えが起こり、これに伴い8番染色体と14番染色体の間の相互転座が生じた。緑色および赤色蛍光を検出できるフローサイトメトリーにより測定した転座がおきている細胞の頻度はの1,5x10^<-5>であった。この細胞をセルソーティングにより単離し、転座がおきている事をPCR法、FISH法、染色体Gバンド解析により確認した。同様に、Nalm-6細胞の22番染色体BCR遺伝子にSite1、9番染色体ABL1遺伝子にSite2を導入し、Cre組換え酵素を7日間作用させるとSite1,Site2間で組換えが生じ、染色体転座が誘発された。フローサイトメトリーによる転座の頻度は5.9x10^<-5>であった。この細胞をセルソーティングにより単離し、転座がおきている事をSKY法により確認した。さらに、Flp組換え酵素を作用させ挿入されている蛍光タンパク遺伝子の除去を行った後、ウェスタンブロット解析を行う事でBCR-ABL1融合タンパクが起きている事を確認した。これらのことから本染色体操作法が任意の染色体転座の誘導に応用できる事が示された。
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