研究概要 |
本研究では,3D-FISH解析により,遺伝子の担体である染色体が細胞核内で規則性をもって折りたたまれている3次元性を捉え,染色体構造異常症例を対象として構造異常に関与する染色体の核内3次元配置が変化しないかどうかについての検証を行うことにより,解明されていない疾患に関与する遺伝子の機能や疾患の発症機序に迫ることを目指す. 2008年度は,生殖細胞系列変異として正常集団に認められる均衡型転座t(11;22)症例の11番と22番染色体の核内3次元配置を検討するために,3D-FISH解析に適切なプローブの組み合わせをデザインし解析を行った.対象とコントロール試料それぞれに,細胞の3次元の立体構造を維持しつつ固定するための特殊処理を施し,各標本にプローブミックスをハイブリダイズ,解析用標本を作成した.共焦点レーザースキャン顕微鏡で細胞核の3D画像を取り込み,3次元立体再構築ソフトでデータ処理を行った.FISH法の至適条件についてはほぼ確立できたが,解析の過程で,顕微鏡下に観察される細胞の大きさが様々であること,細胞核が楕円体になっておりしかもその程度が細胞核によって異なることを含む,いくつかの課題に気づいた.細胞核が楕円体になっていることは標本作成時の手技をさらに工夫する必要性を,細胞核の大きさの違いは細胞周期と相関すると考えられるため,培養細胞を同調処理等により細胞周期を特定した細胞核の標本作製を試み,そのうえで計測を実施し,細胞周期の影響に関する基礎データを蓄積・検討することが必要と考えた. 2009年度は,2008年度に浮かびあがった課題についてひとつずつ解決してゆき,その結果をふまえ必要な基礎データを集積しつつ,対象とコントロール試料の結果を比較,当該染色体領域あるいは構造異常部位近傍の候補遺伝子領域間の距離,および相対的核内配置などに差がないかどうかについて評価を進める.
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