研究概要 |
ヒトゲノム解析研究の進展により,約1700もの疾患の診断目的の遺伝子検査法が確立されてきたが,関与する遺伝子の機能や発症機序までは解明されていないものが多い.現在進められている遺伝子解析研究は主に遺伝子の一次構造の違いに注目しているが,本研究では遺伝子の担体である染色体が,細胞核内で規則性をもって折りたたまれている3次元性に注目し,構成的染色体異常症例を対象として関与する遺伝子の核内3次元配置が変化することによる臨床的影響についての検証を行うことを目的とする. 本研究の目的である構成的染色体異常に関連する遺伝子の3D-FISH解析で計測しようとしている,プローブのシグナル間の距離,核膜までの最短距離,放射状核内配置を測定するに際して,計測対象の培養細胞の細胞周期により細胞の体積が変化していることに2008年度に気づき,2009年度にはある細胞周期に特異的な抗体を用いた免疫染色を3D-FISH解析と組み合わせて実施することにより,個々の細胞の細胞周期を同定しながらプローブの計測をする方法の確立と試みた.しかしながら,免疫染色とFISH法を同時に染色する解析は,現時点で利用可能な蛍光色素や顕微鏡および解析ソフトの機能では不可能であることが判明したため,用いる培養細胞を同調処理することにより特定の細胞周期が優位な状態の細胞を準備し,標本を作成して3D-FISH解析をすすめる戦略に変更した.培養細胞の同調処理についてはコントロール細胞を用いた予備実験にて技術的にほぼ確立でき,3D-FISH解析に用いるプローブも候補とする疾患の関連遺伝子を指標にデータベースから選択,DNA抽出,座位確認を行った.今後,同調処理したコントロールおよび患者細胞株から3D-FISH解析用標本を作製,それぞれプローブの3次元での核内配置の計測を行い,コントロールと患者間で差がないかについて検証してゆく.
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