研究概要 |
報告者は、TGF受容体2型遺伝子(TGFBR2)の変異によって引き起こされるMarfan症候群タイプ2(MS2、現在はLoeys-Dietz症候群タイプ2B)の発症機序についての研究を行っている。TGFシグナル系は細胞外マトリックス (ECM)産生に亢進的に働き、またECMはTGF-β1の貯蔵の場となっていることが知られている。TGFBR2の変異によるTGFシグナル系の減弱がMS2の原因であると我々は報告したが、その後LoeysらはTGFBR2およびTGFBR1の変異によるTGFシグナルの増強が発症原因であると報告した。矛盾する結果を説明する為に、今年度は以下の実験を行った。(1)gene targetingベクターをES細胞に導入し、相同組み換え体の選択を行ったが、組み換え体を得ることが出来なかった。そこでprophage systemにより、targetingベクター を再構築し現在選択を行っている。(2)マウス線維芽細胞(NIH3T3)に変異型及び野生型TGFBR2を一過性に発現させ、ECMタンパクの発現量の変化をリアルタイムPCR法にて定量化した。ターゲット遺伝子(Col6a1、Dec、Fbln2、Fbn1.ltga3)と内部コントロール(Actnb)の発現量を定量した結果、TGFの添加の有無に拘らず、変異型TGFBR2による発現量の変化は観察され無かった。また野生型TGFBR2や導入していないNIH3T3では、TGFの添加によりECMタンパク遺伝子の発現量は増加すると予想されたが、逆に減少していた。このことからECM発現量の増減が発症の直接的な原因ではなく、ECMタンパクの構造や修飾的な異常が原因ではないかと,考えており来年度以降の研究を行う。
|