研究概要 |
報告者は過剰な膜性骨化を主症状とするCamuratii-Engelmann Disease(CED)がtransforming growth factor β1(TGFB1)の突然変異で発症すること(Nature Genetics,2000)と全身の結合組織の脆弱性による骨格、心血管異常を主症状とするMarfan syndrome type II(現在はLoeys-Dietz syndrome type 2B,LDS2B)の原因遺伝子がTGF receptor type IIであることを報告した(Nature Genetics,2004)。これらの症候群はTGFシグナル系と細胞外マトリックスタンパク質の異常が原因であると考えられる。その発症機構を明らかにするために、モデルマウスの作製に取り組んでいる。これまでにも、Tgfb1の218番目のアルギニンをシステインに置換するノックインマウス(CEDモデル)とTgfbr2の449番目のセリンをフェニルアラニンに置換したノックインマウス(LDS2Bモデル)の作製を行ってきたが、誕生するキメラマウスが全て不妊であった(精子がほとんどなく、精巣の形成不全の表現型を示す)。本年度は新たに作製したtargeting constructを用いて単離した相同組換えES細胞(各遺伝子に対して2クローンずつ)を用いて、キメラマウスの作製を行った。Tgfb1ノックインマウスでは1匹のキメラマウスが誕生し、Tgfbr2ノックインマウスではキメラマウスを得ることができなかった。原因は不明である。現在は誕生したキメラマウスを野生型マウスと交配させながら、ヘテロの誕生を待っている。 来年度は変異TGFBR2を安定的に発現するNIH3T3細胞を用いたin vitroの系で、細胞外マトリックスタンパク質の解析を行う予定である。
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