研究概要 |
膵癌(大部分は浸潤性膵管癌)ならびに胆道癌(特に胆管癌・胆嚢癌)は、難治性癌の夜表とされている。これらの病態には、癌細胞増殖および抗アポトーシスの特性が関与する。生物時計が制御する概日リズムの下で、癌の細胞増殖や抗アポトーシスが行われるとの作業仮説に基づき、本年度の実績は以下の通りの解析を行った。 1.癌細胞の時計遺伝子と抗アポトーシス・細胞接着因子との関連解析 癌細胞株に、DEC1ないしDEC2発現プラスミドを導入した過剰発現細胞、ならびにDEC1ないしDEC2標的のsiRNAを導入したノックダウン細胞を作製した。これら細胞で、DEC遺伝子と抗アポトニシスおよび細胞接着因子との関連を検討するために、PARP,caspase,Bcl-2 family,claudin,catenjn,cadherin等の遺伝子ならびにタンパク質発現を検討した。きらに免疫沈降法を用いて、DEC遺伝子と抗アポトーシス・細胞接着因子との相互作用を確認した。 2.抗癌剤および抗腫瘍性サイトカインが時計遺伝子発現・癌細胞増殖に及ぼす影響 癌細胞株に、抗腫瘍性サイトカイン(TNF-α,IFN-α,β,γなど)を導入してから、血清刺激を行い、概日リズム下における癌細胞の時計遺伝子の位相の変化を解析した。概日リズム下での抗腫瘍性サイトカイン投与効果による、癌細胞の増殖能・浸潤能をMTT assay, matrigel invasion assayを用いて検討した。さらに、抗アポトーシスおよび細胞接着因子との関連を検討するためにて、PARP、caspase,Bcl-2 family,claudin,catenin,cadherin等の遺伝子ならびにタンパク質発現を検討した。 以上より、時計遺伝子DEC1/DEC2が、細胞増殖や抗アポトーシスを介して、癌の抗悪性度に関与していることが証明された。
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