研究概要 |
東京京大学医学部附属病院で切除された肺癌の外科手術材料の核酸抽出を施行し、DNAチップ、特にエクソンアレイにて解析した。2005年以降に採取された検体を順次抽出し、現在は肺扁平上皮癌12例、対象として肺腺癌24例を施行している。肺扁平上皮癌12例のうち、特に1例は特発性肺線維症/特発性問質性肺炎の症例で、3例は肺気腫や他の間質性肺炎が疑われる症例であった。症例数は少ないが、肺線維症4例と他の8例のクラスターリングを施行した。肺線維症群で特に発現の亢進している遺伝子群はリンパ球系表面抗原やケモカインやサイトカインのリガンドや受容体であった。このデータからは肺線維症という炎症を背景にした病変の浸潤リンパ球を見ている可能性があるが、ケモカインやサイトカインのリガンドや受容体が腫瘍で発現している可能性も想定される。また特に発現の低下している遺伝子群は細胞周期を負に調節する因子が見られる。亢進または低下している分子を、組織病理学的にどのような特徴があるのかを今後検討する予定である。 培養細胞の扁平上皮化生誘導モデルにおいて、TGFβ刺激化にSlug, Jag1, p63は有意に発現の亢進していた。上記の肺癌切除症例での発現の発現解析のクラスタリングでは有意に変化している分子群としてはリストされなかった。肺扁平上皮癌12例でJag1とSlugはそれぞれ10例、11例の発現が確認された。またp63に関しては5例で、3例は肺線維症症例であった。症例が少ないためかいずれの分子の発現も統計学的有意差は得られなかった。組織中での発現での検討が必要であること、また現時点では症例数は少なく今後もさらに追加し検討していく予定である。
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