東京京大学医学部附属病院で切除された肺癌の外科手術材料の核酸抽出を施行し、DNAチップ、特にエクソンアレイにて解析した。2005年以降に採取された検体を順次抽出し、現在は昨年度に施行症例とあわせて肺扁平上皮癌20例、肺腺癌24例を施行し、組織学的に明らかなUIP patternを示す扁平上皮癌7例と、臨床的背景もあわせUIP patternなどの組織学的に間質性肺炎パターンを有さない扁平上皮癌7例を比較対象としてクラスタリング解析を施行した。UIP patternを示す症例で発現の高い分子群として、1)ダイニンなどのモーター蛋白関連分子や、2)分子機能はまだ未解明ではあるが、気管支上皮に高発現し繊毛形成に重要と考えられる分子群などが上位に上がっている。通常間質性肺炎を背景とする場合、気管支上皮化生や扁平上皮化生を起こし、これらの化生上皮由来の腫瘍が発生すると考えられている。上記で抽出した分子に関して、その発生と予後解析を含む臨床病理学的検討をし、肺線維症からの腫瘍発生で真に重要な分子を抽出する予定である。 また東京大学医学部附属病院で1999年以降2008年までに切除された肺扁平上皮癌症例のうち、追加検索可能な症例128例のパラフィンブロックより、組織マイクロアレイを作成した。上記のエクソンアレイで候補にあがった分子で、予後を含めた臨床病理学的項目を併せて検討し、免疫染色やin situ hybridizationなどの利用して、その分子の組織病理学的な分布をとその機能などを併せて検討する予定である。
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