研究概要 |
胆道閉鎖症(BA)は硬化性胆管炎と胆管閉塞が基本病態であり、その原因としてレオウイルス科ウイルス(二本鎖RNAウイルス)の関与が示唆されている。昨年度は胆管細胞に対するウイルスの作用機序を胆道系自然免疫の観点から検討したが、本年度は自然免疫不全の観点および引き続いて誘導される獲得免疫の観点から以下の2検討項目について準備および解析を行った。1)NK細胞の解析:C型肝炎ウイルス患者における抗ウイルス療法の無効機序として、IFN-alphaやperforin産生が欠如した機能不全NK細胞が注目されている。BA患児肝組織を用いたNKマーカー(CD16,CD56,CD57)の単免疫染色および多重免疫染色を行い、BA肝組織および肝外胆管の病変部における機能不全NK細胞(特にCD56^-CD16^+NK細胞)の同定および解析中である。レオウイルス科ウイルス感染に対する胆道系自然免疫不全をもとに、胆管病変および不適切な獲得免疫現象の発生について検討中である。2)BA児血清中の自己抗体の検出:獲得免疫による組織障害として自己抗体の出現を伴う自己免疫現象が考えられ、またレオウイルスウイルス感染マウスモデルにおいて自己抗体の出現が報告されている。本年度、BA患児の血清と肝組織のペア検体を5例収集し、患児血清中の自己抗体を検出した。方法として、肝組織切片を用いた免疫組織化学的手法および昨年度樹立したヒトBA培養胆管細胞を抗原としたウエスタン法を行い、現在BA児血清中に存在する自己抗体の検出及び抗原の同定について解析中である。
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