研究概要 |
胆道閉鎖症は炎症と線維化による肝外胆管閉塞および胆汁うっ滞による進行性の肝障害を基本病態とする。その原因または病態形成の関与としてレオウイルス科ウイルス(二本鎖RNAウイルス)感染が示唆されており、ウイルスに対する胆道系自然免疫応答が胆管炎および硬化性病変の形成に関与していることを報告してきたが、ウイルス感染に対する胆道閉鎖症患児特異的な免疫応答の詳細は不明である。本年度は、ウイルスに対する胆道閉鎖症患児の自然免疫不全の観点から解析した。特にNK細胞は自然免疫に関わる重要な免疫担当細胞で、主なサブセットであるCD56+NK細胞と比較し、CD56-CD16+NK細胞はNK活性およびサイトカイン産生が低下している。胆道閉鎖症患児肝胆道組織および対照疾患としてC型慢性肝炎、原発性胆汁性肝硬変および正常の肝組織を用いて、NKマーカー(CD16, CD56, CD57)の単免疫染色および多重免疫染色を行い、BA肝組織および肝外胆管の病変部における浸潤NK細胞を検討した。その結果、正常肝ではCD56-CD16+NK細胞がほとんど見られなかったが、疾患群ではCD56-CD16+NK細胞を認めた。特に、胆道閉鎖症では他疾患と比較し、より多数のCD56-CD16+NK細胞を認めた。胆道閉鎖症では、IFN-alphaやperforin産生が欠如した機能不全NK細胞が増加しており、レオウイルス科ウイルス感染に対する胆道系自然免疫不全をもとに、胆管病変および不適切な獲得免疫現象の発生が胆道閉鎖症の病態に関与している可能性が示唆された。
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