研究概要 |
我々が提唱した膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)ならびに粘液産生胆管腫瘍(MPBT)の新分類において重要なポイントとなるMUC1とMUC2、さらに、膵胆管系癌の予後不良因子であるMUC1とMUC4の発現について、これまで申請者らが明らかにしてきたムチン(MUC1, MUC2, MUC4)の遺伝子発現機構に加え、膵胆管系の前癌性病変から広く発現して「早期マーカー」としての意義があるMUC5AC(胃表層型分泌ムチン)についてもその遺伝子発現機構を明らかにした。 MUC5AC低発現細胞株において5-aza-2'-deoxycytidineとtrichostatin A処理を検討し、MUC5AC mRNAの発現回復を確認した後、様々な臓器由来のヒト癌細胞株についてDNAメチル化定量解析法(MassARRAY法)を用いてのメチル化解析を行った結果、MUC5ACプロモーター上流(約-3,700付近)のメチル化状態とMUC5AC mRNA発現状態に相関が確認された。更に、クロマチン免疫沈降法を用いたMUC5ACプロモーターにおけるピストンH3-K9修飾状態の検討においても、MUC5ACプロモーター上流領域においてMUC5AC発現への関与が示唆された。これらの結果から、MUC5AC発現制御においてもDNAメチル化とピストンH3-K9修飾の双方が影響している可能性が明らかとなった。 MUC1の特定部位を鮮明に免疫染色することができる新規抗体(特許出願中)を開発し、この抗体により、これまで不十分であった種々の膵腫瘍における様々なタイプのMUC1の発現機序を解明できた。 また、エピジェネティクスの分野において、従来までの検出限界5%を超える0.1%の感度を有する新規DNAメチル化検出法(特許出願中)を開発し、MUC1、MUC2、MUC4、MUC5ACの遺伝子発現過程におけるDNAメチル化のより詳細な解析を行えるようになった。
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