研究概要 |
本研究は、感染アレルギーの予防と治療を最終目的として、自然免疫を介した鼻粘膜上皮細胞および樹状細胞のタイト結合によるヒト鼻粘膜バリア調節機構の解明を行うものである。本年度は、確立したhTERT遺伝子導入ヒト鼻粘膜上皮細胞を用いて、自然免疫に関与が知られているToll-like receptor(TLR)に焦点を当て、合成リガンドおよび気道感染が知られているrespiratory syncytial virus(RSウイルス)を用いてタイト結合発現調節機構の解析を実施した。 hTERT遺伝子導入ヒト鼻粘膜上皮細胞においては、ヒトで知られている10種類のTLRの発現がみられた。TLR2,3,4,7/8,9の合成リガンドを処置した結果、dsRNAウイルスを認識するTLR3のリガンドであるpoly I:C処置により、炎症性サイトカインの産生増加と伴に、タイト結合蛋白あるJAM-Aの著しい発現低下が認められた。これらの変化は、EGFRの関与および様々なシグナル伝達経路を介して、最終的にはNF-kBによって調節されていた。 次に、hTERT遺伝子導入ヒト鼻粘膜上皮細胞を用いて、上気道におけるRSウイルス感染モデルを作製した。RSウイルス感染により、ほとんどの細胞内にウイルスのエンベロブ蛋白の発現およびウイルスフィラメントの出現がみられた。さらに感染により、炎症性サイトカインの産生増加および構造と機能を伴うタイト結合蛋白あるclaudin-4およびoccludinの発現増加がみられた。これらのタイト結合蛋白の誘導は、ウイルスの出芽に関与している可能性が考えられた。RSウイルス感染による炎症性サイトカインおよびタイト結合蛋白の変化は、PKCδ/HIF-1α/NF-κB経路を介して調節されていた。以上の結果から、感染アレルギーの予防と治療において、タイト結合の調節機構の解明は重要であった。
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