研究課題
前年度はRA患者40例、変形性関節症(以下、OA)患者11例の滑膜組織を、本人の同意を得て手術時に採取し、Pin1抗体および浸潤マーカーであるMMP-1、MMP-3抗体、増殖マーカーであるPCNA抗体、筋線維芽細胞マーカーであるalpha-SMA抗体などで免疫組織染色を行った。RAおよびOA滑膜細胞の初代培養株(以下、RA-FLS、およびOA-FLS)を複数株樹立し、ウエスタンブロット法を行った。その結果、滑膜細胞の筋線維芽細胞への分化においてPin1の関与が示唆された。上記検討に加え今年度は、NFκbとPin1の発現との関連の検討を行った。関節リウマチ病変の形成には破骨細胞の活性化が必須である。また、その活性化にはNFκbのリン酸化が関与していることが知られている。そこで、筋線維芽細胞からさらに破骨細胞への分化の可能性があるのではないかと考え、その検討を行った。免疫染色、ウェスタン法ともにPin1とNFκbとの間で相関がみられた。しかし、破骨細胞への分化に関連があるとされているRANK-Lについても同様の検討を行ったが、これについては明確な相関はみられなかった。また、関節リウマチでの過剰発現が知られているIL-6に注目し、それとPin1分子との関係を検討した。IL-6の発現を制御する転写因子の1つであるCAATT/enhancer binding protein-β(C/EBP-β)とPin1との関係を解析した。IL-6遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域(-179/+12)をルシフェラーゼ遺伝子の上流に組み込み、Pin1とC/EBP-βの発現プラスミドを用いて、ルシフェラーゼアッセイを行い、C/EBP-βの転写活性におけるPin1の働きを解析した。その結果、Pin1の用量依存的にC/EBP-βの転写活性の増強が認められた。一方で、野生型Pin1に代わりWWドメインに変異を導入したW34A変異型Pin1を用いると、C/EBP-βの転写活性の増強効果は認められなかった。また、GST-Pin1融合タンパク質を用いてプルダウンアッセイを行った結果GST-Pin1とC/EBP-βの結合が認められた。さらに、RA組織を用いた免疫染色によりPin1の発現量とC/EBP-βの核内での活性化に正の相関が認められた。以上の結果から、Pin1がC/EBP-βの活性化に関与する事が示された。Pin1によるC/EBP-βの詳細な制御機構について今後検討の予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (8件) 備考 (1件)
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